先日、MOS講座のPC講師をしている筆者の元に生徒のお一人から質問がありました。
「Wordのヘッダーとフッターにある『奇数/偶数別ページ指定』って何に使うの?」
といった内容です。
MOS対策の模擬試験プログラムで学習している方は何度かお目にかかっている機能なので、出題されれば難なく解けてしまう問題です。
でも、実際にWordを使って文書を作る際に、どんな場面に使うか想像できないという質問でした。
実は、数あるワープロ系の資格の中でも、MOSは「Wordの機能を知ることに特化した資格」な為、こういった問題は結構多く存在します。
検定の問題は全て用意された文書を細かな指示の通りに操作するだけなので、1から文書を作る機会はありません。
よって、合格者でも実際に文書を作らせると、凝ったレイアウトのものを作ることが出来ない方もいるわけです。
こういった理由で、「MOSは役に立たない」と言われる原因だと思います。
少し話は逸れましたが、今回は「MOSは役に立たない」とは言わせない為に、実践的に使えるヘッダーとフッターの詳細を紹介。
ヘッダー・フッターとは
ご存知の方も多いでしょうが、まずヘッダーとフッターは本文の上下の余白に表示する文字の事です。
似た文字でややこしいので、「ヘッダーとフッター、どっちが上の文字だったけ?」と混乱しそうになります。
……実際に私は子どもの頃、覚えても直ぐに忘れてしまい、毎回困りました。
簡単な覚え方として、
ヘッダーはHead(ヘッド)だから頭、上の余白に配置する文字。
フッターはFoot(フット)だから足、下の余白に配置する文字。
と覚えてしまいましょう!
と、いった感じで筆者は教えています。
この教え方が覚えやすいかは人それぞれでしょうが、少なくとも筆者の教え子でヘッダーとフッタのどちらが上でどちらが下に入るのかが迷った人は今の所いません。
(覚えられないと毎回調べなきゃいけなくなりますので、最初に紹介しておきます)
さて、簡単な部分はこれぐらいにして、本題に入ります。
冒頭の質問の「奇数/偶数別ページ指定」についてですが、以下の通りとなります。
見開きページの文書の作成時に使える
以上のような本を見たことはありませんか?
小説の本とかでは、よく見かけるレイアウトかと思います。
ヘッダーの文字(豆知識ですが、業界用語で「柱」と言います)がページの端っこに寄せるような形で配置されている文書です。
こういったレイアウトを作成する場合、段落全体を右揃えにしたり、左揃えにしたり、1ページずつ書式を変更……するのは面倒ですよね?
いや、そもそもヘッダーやフッターに入れた文字は何の設定も構っていない状態だと出来ませんので、テキストボックスを挿入して作成することになると思います。
……実際に、そういったWord文書を拝見したことがありますので、機能を把握していない方にとっては「Wordって面倒だな」といった感想を抱きながら作業をしたことでしょう。
普通のビジネス文書やレポート等を作成する時はA4サイズの紙を1枚ずつ捲って見ますから、見開き状態のことなど想像すら出来ない人も少なくありません。
けど、Wordは、こういった見開きのレイアウトを想定した文書の作成も可能です。
実際に、見開きページの本を作成する手順をご紹介します。
見開き文書の作り方
まずは、《レイアウト》タブから《ページ設定》をクリックし、出て来たウィンドウの《余白》タブを次のように設定しましょう。
とじしろ
本の内側にとる余白のこと。ページ数が多い本ほど、ページの内側が開きにくくなる為、外側の余白より多めにとる必要がある。
尚、糊綴じをしていないタイプの本(新聞紙のような折っただけ+真ん中をホチキスで留めた本)の場合や、ページ数が極端に少ない本の場合は、とじしろは0mmでOK。
また、元々、余白を広くとってあるならば、特にとらなくても本の内側の文字が見えにくいという事もないので、無理に設定しなくても大丈夫。
印刷の形式
印刷の形式 | 内容 |
標準 | デフォルトで表示されているやつ。普段はこのままの使用でOK。 |
見開きページ | 余白の幅を一方向のみ広げた場合、両面印刷する時、広げた余白の位置が同じ方向に印刷できるようになる。 奇数ページは左に余白を広くとった場合は、偶数ページは右側の余白が広くなる。 |
袋とじ | 指定した用紙サイズに2ページずつ印刷されるレイアウトになる。 用紙サイズをA4縦に設定し、袋とじ設定をすると、A5横サイズが縦並びで2ページ分並ぶ。 用紙サイズの半分のサイズになるので、用紙サイズ=1ページ辺りのサイズではない事に注意。 |
本(縦方向に山折り) | 指定した用紙サイズに2ページずつ印刷されるレイアウトになる。 両面印刷をした時は折るだけで冊子になるように面付されるので便利だが、4ページでワンセットな点に注意。 用紙サイズをA4縦に設定し、本(縦方向に山折り)を設定すると、A5縦サイズ(用紙サイズで設定した半分の大きさ)が横並びで2ページ分並ぶ。 一見、袋とじと同じに聞こえるが、こちらは用紙サイズと同じ設定の通りの縦横比。 |
本(縦方向に谷折り) | 基本的な機能は、本(縦方向に山折り)と同じ。 ただし、こちらは一般的な本とは逆向きに綴じられる仕様なので、通常は使う機会がない。 |
Wordで用意されている印刷の形式を一覧表にしてみました。
最も重要な点のみ言いますと、
「標準」「見開きページ」は、設定した用紙サイズそのままのサイズで文書が作成されます。
他の3つは、設定した用紙サイズの半分のサイズで文書が作成されます。
これらの仕様を知らない方の場合、「A4サイズに設定したのに小さく印刷される! Wordが壊れた!」と思ってしまう可能性があるわけです。
知っているのであれば、「本(縦方向に山折りor谷折り)」を使って文書を作成するのが良いのでは?
と、思うかもしれません。
仕上がりの2倍の大きさの用紙がセットできるプリンターをお持ちであれば、折るだけで簡単に冊子が作れますからね。
けど、この「本(縦方向に山折りor谷折り)」は罠が用意されています。
まず1つ目は、表に書きました通り4ページがワンセットでページ構成をする必要がある点です。
そして、途中で「やっぱり標準or見開きページで作り直そう」とした時、大きくレイアウトが崩れてしまい、設定し直すのに少し苦労します。
よって、見開きページの文書を作成したい場合は、「見開きページ」に設定をする事をお勧めします。
一般家庭用のプリンターはA4サイズですし、基本的にはA4サイズの文書を両面印刷し、とじしろ側をホチキスで留めて冊子にしますよね?
「小冊子印刷がしたい!」と思っても、プリンター側の設定で小冊子印刷が簡単にできる設定が用意されている場合が多いので、わざわざWordで設定する理由はないと思います。
(小冊子印刷対応のプリンターをお持ちの方は、《ファイル》→《印刷》→《プリンターのプロパティ》辺りを調べてみれば発見できるはず)
ヘッダーとフッターで奇数/偶数別ページ指定にする
さて、見開きで文書を作成するための最初の準備は整いました。
いよいよヘッダーとフッターの挿入に入ります。
(ちなみに、ここで言う「ヘッダーとフッターで奇数/偶数別ページ」というのは、ノンブル(ページ番号)を含みます)
奇数ページの設定
《ナビゲーション》グループにある《次に移動》をクリックすると、スムーズに偶数ページに移動できますのでお勧めです。
今回はフッターを挿入しないので使いませんが、フッターがある場合は同じく《ナビゲーション》グループにある《フッターに移動》をすると、同じページのフッター(ページ最下部)へ瞬時に切り替わるので、素早い操作が可能になります。
覚えなくても良い機能ではありますが、覚えておくと効率がとても良くなりますので合わせて紹介しておきます。
偶数ページの設定
偶数ページに移動しましたら、今度はヘッダーの文字を編集します。 同じ文字でもいいですし、何章かに分かれた膨大なページ数の書籍を作成する場合は、章ごとのタイトルに変更しても良いです。
偶数と奇数ページ、別々の文字に設定できるので大丈夫です。
文字の配置の設定
一応、文字の位置を設定する方法も紹介しておきます。
配置したい文字の部分にカーソルを置き、そのまま《ホーム》タブをクリックして表示し、《段落》グループにある《右揃え》のボタンをクリックするだけ。
一般的な書籍の場合、横書きですと「左ページは偶数」「右ページは奇数」に配置されます。
今回は横書きなので奇数ページは右揃えに設定しましたが、縦書きの場合は偶数ページを右揃えにし、奇数ページは左揃えにしてください。
ヘッダー・フッターを閉じる
ついでにご紹介しますが、ヘッダーとフッターの編集後、通常の本文へと戻る手段は(筆者の知る限りでは)3パターンあります。
- ヘッダー・フッターの編集時のリボンの右側にある「ヘッダーとフッターを閉じる」ボタンを押す。
- ヘッダー・フッターの境目の点線より本文の部分(どこでもOK)をダブルクリックする。
- キーボードにある左上の「esc」キーを押す。
上記のどれを使っても大丈夫です。
特に、ホームタブとかで書式を変更後は2番目か3番目の手段を覚えておくと、非常に便利ですので、是非。
見開き状態でWord文書を編集する方法
上記の設定だけでも十分なのですが、仕上がりイメージを確認しながら編集したい方もおられる筈。
そういった方の為に、見開き状態でWord文書を編集できる方法をご紹介します。
まずはWord画面の右下にある「○○%」と表示された部分をクリックし、次の画面を出してください。
上記のようなウィンドウ(正確には、ダイアログボックスと言うらしいです)の右側にある、ディスプレイのようなアイコン部分をクリック。
すると、下に小さなボタンが8マスほど出てきますので、横並びの2マス分が濃い青の色がつく部分でクリックしましょう。
一応、8マス下に書いてある文字が「1×2ページ」と表示されているか確認してください。
(※バージョンによっては、上記画像のような右側からではなく、左側から2マス分になると思います)
すると、下の図のような見開き表示になります。
もし、1ページしか表示されていない場合は、倍率を低く(%の数字を小さく)してください。
これで出来ました♪
……と、言いたいところですが、このままだと実は非常に大きな問題を抱えております。
ヘッダー部分を見れば一目瞭然ですが、左右が逆に表示されております。
DTPソフト(プロ用の編集ソフト)だと、1ページ目は単ページに表示され、2ページ目以降は見開きページで表示されるのですが、残念ながらWordの場合はそこまで優秀ではないようです(※画面はoffice365環境)。
ですが、ここで諦めてはなりません。
正確に左右の見開き状態を表示したままWord文書が作成できる最も楽な方法をお教えいたします。
《挿入》タブにある1番左の《ページ》グループにある《表紙》から適当なのを選んでください。
どのデザインも気に入らないとか、深いことは考えなくていいです。
何でもいいから適当に選んでクリックしてください。
すると、上記のように、今度は正確な見開き状態になります。
この「表紙」は0ページ目扱いなので、実際に編集すべき文書の前に1ページ分が挿入されます。
文書作成後等、見開きで表示する必要がなくなった場合は、再び《挿入》→《表紙》を選び、《現在の表紙を削除》をクリックすれば元に戻ります。
ちなみに、見開きページで見る必要がなくなった際、単ページ表示にしたい場合は、再びズームのウィンドウのディスプレイのようなアイコン部分をクリックし、1×1のマスでクリックしてください。
この表紙機能を使った方法の他にも0から開始したページ番号の白紙ページを作成する方法もあるのですが、改ページの削除の手間も考える必要があるので、最も楽な方法は「一時的に表紙を挿入する」だと思います。
尚、表紙を挿入した際に、ご自分の名前が出て気になる方は、下記のページも合わせてご覧ください。
Wordで小説の同人誌(自費出版)が作れる
今回ご紹介した見開きページの作成方法を知る利点として、最も有効利用ができそうなのは同人誌が作れることじゃないでしょうか?
かなり昔ですと、同人専用の印刷所は入稿可能データが「Photoshopで作られたEPSファイルのみ」とかいう指定がありましたが、今ではWord対応の印刷所もかなり多いです。
同人誌に限った話ではありませんが、実は地域にある小さな印刷屋さんはWordで入稿してくる一般人が結構いたりします。
(筆者は、いくつかの印刷所でDTPオペレーターをしていた経験があります)
Wordで作成した会報とかをそのまま印刷してほしい、という希望者もけっこういます。
ネットで入稿を受け付けている印刷所では入稿データのルールは非常に厳しいですが、実は地域の印刷屋の場合はあってないようなものです。
……ただ、ネット印刷に比べてお値段はお高めですが、多少の不備は修正してくれるメリットがあります。
今回の内容に沿ったお話をしますと、大ボリュームのページ数なのに、とじしろ部分が狭すぎて本になった際に本文が見えなくなる可能性がある場合は印刷所で手直ししてくれます。
(激安のネット受付印刷所は、基本的にそういった気遣いはないです)
ので、知識さえあれば、値段がお安い印刷所に頼むことができます。
逆に、知識がない場合は、手直しもしてくれる印刷所にお世話にならないと、おかしなレイアウトのまま印刷される可能性があります。
どちらを選ぶかは個人の自由ですが、知識はあって損はないです。
学生ならばレポートや論文作成にも使えますし、社会人ならば議事録等の片面ホチキス留め前提の冊子も上手く作れるようになります。
人によっては滅多に使わない知識かもしれませんが、是非覚えて役に立ててください。
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