今回の記事は、Word・Excel・PowerPointを1から学ぶパソコン基礎講座にて講義をしている最中に出た質問です。
筆者のパソコン講座では、officeソフトの3種類の内、まずはWordの基礎を学びます。
基本的な文字の入力、書式の設定の仕方から学び、簡単な表作成までを学びます。
映像講義が主体のパソコン教室ではありえない話なのですが、テキストを片手に講師が講義をする場合だと、集まった生徒によっては時間が余ることがあります。
そういった時は、何か別の課題を出さねばなりません。
(優秀な方が勢ぞろいだと嬉しい反面、用意されたテキスト以外の課題を準備しなくてはならない為、実は大変でもあります……けど、力がついているのがわかるのは嬉しいので頑張って準備してしまいますが)
その日はWordの基礎固めが終わったところだったので、「実際にビジネス文書を作成してみましょう」と、見本のプリントを1枚ずつ配ばって、作成してもらうことにしました。
けど、ここで予想外の事態が起きてしまいました。
Wordでわかりやすい例を作成してみましたので、下の画像をご覧ください。
ここまで極端ではありませんでしたが、生徒の半分ぐらいは上記のようにスペースを使ってレイアウトを調整した文書を作成してしまいました。
「スペースで調整しちゃダメですよ」と、注意すると
「何でダメなの!?」
「ちゃんと出来てるじゃん!」
と、いった反論が来てしました。
と、いうわけで、世の中にはスペースでレイアウトを調整することに全く疑問をもっていない方が一定数いると思いますので、思い切って記事にしました!
Word・Excel・PowerPoint用の教材について
まず、前提として、上記の出来事は「基本的なofficeソフトの操作は習得しているレベルの人達」であります。
筆者のパソコン講座では、初心者の方には下のテキストを最初に使って学んでおり、章ごとにある練習問題や巻末の総合問題はスラスラ解けるレベルでした。
リンク
リンク
このテキストは非常にわかりやすく、順を追って解説をしているので、これ1冊あれば「とりあえずofficeの3つのソフトは操作できる」レベルにはなれます。
一つひとつの操作が非常に丁寧に書かれていますので、(パソコン系の資格取得を目指すとかでない限りは)誰かにパソコンを教えてもらわずに済むはずです。
けど、こちらの本は初心者にはお勧めできるテキストでありますが、この出版社の出す本はMOS対策テキストを含め、練習問題の出題形式も丁寧すぎるのが少しだけ気になります。
少しだけ例に出してみましょう。
【問題】
- Wordファイル「〇〇」を開き、文頭に「令和〇年〇月〇日」と入力してください。
- 1で入力した段落を右揃えに設定してください。
- 3行目から始まる段落に2字分の左インデントを設定してください。
上記の問題文は適当に書きましたが、このような形で出題されます。
実はMOSも全く同じで、全てにおいて「ファイルの操作は完全に指示がある状態」です。
ぶっちゃけて言ってしまいますと、実際の現場では、こんな細かな指示が飛んでくるわけがありません。
このような「細かな指示があった状態でしかファイル作成の経験がない」場合、実際の仕事ではどうなるでしょう?
そんな不安があり、冒頭の通り「ビジネス文書を見本通りに作成してください」といった課題を出してみました。
その結果が、スペースを大量に投入したレイアウト調整のビジネス文書の出来上がり……です。
勿論、上のテキスト内容はほぼ全て把握した状態なので、全員がエンターキーによる改行、インデント設定、中央揃えetc.初歩的な書式設定の仕方は「指示されれば迷いなく出来る」にも関わらず、「具体的な指示がない状態で作らせる」とこうなってしまいました。
印刷してしまえば全く問題ないので、どこが悪いのか分からないのが初心者です。
この記事の冒頭にありました通り、一言だけ注意したら強い反論が来てしまいました。
では、こうしたスペースによる調整がダメな理由と、そうならない為の対策を下に書いていきたいと思います。
(※理由をきちんと告げた後、忘れかけたであろう1ヶ月後に新たな文書を作ってもらったところ、綺麗なデータを作れるようになっていました)
Word文書の作成の際は編集記号の表示をしよう
スペースのレイアウト調整がダメな理由を説明する前に、Wordで文書を作成する際に気を付けねばならない重要な点があります。
《ホーム》タブの《段落》グループの右上にある《編集記号の表示》ボタンをクリックしてください。
上の画像の赤い〇で付けた部分です。
マウスポインタ―を当てていると小窓で簡単な説明文が表示されますが、「段落記号(改行マーク)」「全角・半角スペース」「タブ」等の編集記号がグレーで表示されるようになります。
あくまでも画面上で見えるだけで、実際に印刷はされませんのでご安心を。
Wordの機能を使いこなしている方は、基本的に表示して文書を作成しています。
むしろ、これがないとキッチリ書式を設定できてない部分があるのではないかと不安でならないぐらいです。
この編集記号が邪魔だと感じる方は、スペースでレイアウトを調整している人……悪い言い方をすると、自称中級者です。
きちんとWordの機能を把握している方だと、下の画像の通り、編集記号を表示しても邪魔になりません。
スペースによるレイアウト調整がダメな理由
さて、編集記号を表示したところで、本題について書いていきましょうか。
忘れてはならないのは、Word文書は「今」作ったら終わりではないという点です。
この手のテキスト掲載の練習問題では「今」解いたら終了で、基本的にファイルを再び開いて編集することはありません。
けど、実際にWordで仕事をする際はどうでしょうか?
順を追って説明していきます。
仕事でビジネス文書を作成する手順
- 上司から「〇〇のお知らせ文書を作成してくれ」と一言だけ指示がある。
- 〇〇についての資料を見て、日時等の必要事項を把握する。
- 文面を考え、Wordで作成し、保存。
- プリンターで1枚出力し、上司に確認をとる。
- 上司から訂正の指示がある。
- Wordファイルを開き、訂正をし、再びプリンター(略/OKが出るまで繰り返し)
ざっくりしとした手順ですが、このように実際の業務ではWordの文書は作成したら終わりではなく、再び開いて編集する必要があります。
仮に……ですが、A4サイズで作成していた文書をB5サイズに変更してくれと指示されたら、どうなるでしょうか?
用紙サイズの変更手順
《レイアウト》タブの《ページ設定》グループにある《サイズ》から任意のサイズを選びます。
今回はB5サイズにしたいので、B5をクリックします。
すると、一瞬にして用紙のサイズがB5に変更できちゃいます。
と、まぁ、ここまでは順調なのですが、ここで2通りの方法でレイアウトを調整した結果を比べてみましょう。
如何でしょうか?
スペースでレイアウトを調整した左側は、大きく崩れてしまいました。
とてもじゃないですが、このままでは使い物になりません。
「用紙サイズの変更なんてありえない!」と思うかもしれませんが、今回の例はたまたま「用紙サイズ」だっただけで、もしかしたら作成した文書内に数行追加の文字がくるかもしれません。
そうなってしまうと、やっぱり同じ末路を辿ってしまいますよね?
個人が作成する文書であれば一発OKになる可能性も高いし、レイアウトが変更されない範囲内でしか再編集しないという手も使えます。
けど、実際の仕事では上司の指示通りに修正しなくてはなりません。
「レイアウトが大きく崩れるからヤダ!」なんて我儘は通用しないのです。
また、毎年の恒例的な出来事であれば、来年以降は1年前のファイルを掘り起こして、少しだけ修正して再利用します。
そんな時、上記のような少しの編集でガッタガタに崩れるレイアウトのWord文書が出てきたら、どう思いますか?
来年以降も自分が担当するのであれば構わないでしょうが、他の方が担当するのであれば……舌打ちしながら「前任者使えねぇ」と呟かれる可能性もありますよ(笑)
ので、スペースを使ってのレイアウトを調整するという方法はやめて、きちんと「書式によるレイアウト調整」に挑戦してみましょう。
書式による正しいレイアウト調整で作成しよう
今回は、ビジネス文書でよく使われる書式を簡単に紹介しておきます。
最低限これだけ覚えておけば、凝ったレイアウトの文書(写真や表の入ったもの)でない限り困ることはないと思います。
右揃え
《ホーム》タブ→《段落》グループ→《右揃え》をクリック。段落全ての文字を行末に揃える機能。
あくまでも「段落」なので、1文字だけ右側に追いやるとかは出来ない。
ビジネス文書では、文書発行の年月日や発行元などで使う。
中央揃え
《ホーム》タブ→《段落》グループ→《中央揃え》をクリック。段落全ての文字を中央に揃える機能。
Wordの用語ではないが、「センタリング」と言われることもある。
主にタイトルで使う。
尚、タイトルは、…にフォントサイズを大きく+太いフォントを使うのも一緒に覚えておくといいです。
インデント
《ホーム》タブ→《段落》グループ→《インデントを増やす》をクリック。(もしくは、《ホーム》タブ→《段落》グループの右下の《段落の設定》から数字で入れる方法もある。参考画像は、下の「ぶら下げ」の項目を参照)
段落全体を指定した(ボタンをクリックした数の)文字数分だけ下げる機能。
ホームタブにあるボタンでは左側しかインデントの設定はできないが、右インデントも可能。
上記の他、《レイアウト》タブにもインデントの設定場所は存在するが、何故そこにあるのかは謎(ここにある事は知らない人が多そう)。
ぶら下げ
《ホーム》タブ→《段落》グループの右下の《段落の設定》 の《ぶら下げ》の部分に任意の数を入力。1つの段落の2行目以降に表示されている部分を字下げする機能。
これとは別に、《箇条書き》機能を使う方法もある(ぶら下げは自動的に設定してくれる)が、最初の「・」は文字じゃないと嫌な人が一定数いるので、こちらの《ぶら下げ》機能を紹介しておきます。
(また、最後に記載しているテキスト形式で保存した際の問題の回避ができるという点でも、ぶら下げ機能をお勧めします)
段落の始まりの1行目の字下げは書式で設定すべきか?
あえて上の書式の設定では書きませんでしたが、「段落の始まりは1字下げる」というのは小学校の作文の書き方で習ったかと思います。
ブログ等のネット上やメールの文面では読みにくくなるので字下げはしませんが、ネットが普及された現在でも紙面上では1字下げのルールは原則的に守るべきとされています。
さて、そうなると、今回のお題である「スペースを使ってレイアウト調整の是非について」ですが、どうすべきか? の問題についてお話しします。
人によって答えは様々ですが、筆者の意見としては段落の始まりの1字下げはスペースを使った方が良いと思います。
と、いいますのは、今回、紹介しました機能は全てWordの書式による設定です。
作成したWord文書は自分or自社で使うだけならば何の問題はありません。
けれど、例えば……社内報に掲載する為の文書を作成してくれと依頼されたとしましょう。
(印刷所やデザイン事務所棟のプロに依頼する場合)最終的には、Wordで編集されません。
テキスト形式で保存された文書を他のソフトウェアでインポートして使われたりします。
実際にテキスト形式(書式なし)で保存してみると分かるのですが、字下げした部分はなくなってしまいます。
(ぶら下げの部分でチラっと記載しましたが、箇条書き機能を使うと同様に、箇条書きなのか分からなくなります)
そうなると、編集する側は非常に困ってしまうのです。
筆者は元々DTP業界におりまして、入稿された原稿データを山のように見てきましたが、字下げ部分が書式で設定されていますとプリントされたものと睨めっこしながら手作業でスペースを入れる作業をしていました。
一応、「置換」で一気にスペースを入れることも可能なのですが、全ての文書が字下げしているわけではないので(箇条書きとか、台詞のカギカッコとか)、自動変換だけに頼るわけにはいきません。
(※あまり大きな声で言えないのですが、DTP業界の人間はofficeソフトの扱いはそれほど詳しくない人もいるので、置換で一気にスペースを入れるやり方を知らない人もいます)
最後の最後で例外を出してしまいましたが、結論としては「作っているデータが今後どのように使われるのか?」を重点に考えて書式を使うかどうかを考えると良いのではないと思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿