MOSの講座をしている最中に、生徒から質問が出ました。
その方は元々ある程度はWordを使える方で、質問をすることが珍しいと思いながら耳を傾けると、その内容はとても意外なものでした。
言われた瞬間、本音を言ってしまうと困りました。
と、いうのは、筆者はパソコンのワープロソフトではなく、ワードプロセッサというワープロ専用機から入った人間です。
文字の背景に色を入れるのは、「網かけ」という機能を使っておりましたから、何の迷いもなくWordでは「文字の網かけ」を使っておりました。
そして、MOSという検定に向き合った時、初めて「蛍光ペン」という機能を知ったわけです。
故に、当然、文書を作成する際に文字の背景に色をつける場合は「文字の網かけ」という機能を使用しております。
詳しくは聞いていませんが、おそらく生徒さんも同様に「文字の網かけ」という機能を普段は使っていて、蛍光ペンは初めて知ったとの事でした。
疑問に思って軽くネットで調べてみたら、蛍光ペン=網かけといった認識で解説している説明が多くて困惑したそうです。
「この2つは、何かが違う」
「けど、それが何かは具体的に答えられない」
そんな心の中のモヤモヤを自己解決できずにいたので、質問に踏み切ったとの事でした。
と、いうわけで、今回は「蛍光ペン」と「文字の網かけ」について深掘りしていきたいと思います。
蛍光ペン、文字の網かけの見た目と大きな違い
まずは、「蛍光ペン」と「文字の網かけ」の2種類の見え方の違いについて比較してみましょう。
フォントの色の変更ボタンの左が蛍光ペン、右が網かけをするボタンです。
両方ともフォントの色の変更ボタンの隣ですから、利便性は全く同じです。
一見して分かる大きな違いは、付けられる色でしょう。
実際にWord文書で試すと、以下のようになります。
ご覧の通り、ボタンを押した時に蛍光ペンは黄色。
文字の網かけはグレーで表示されています。
「なら、黄色く目立たせないなら蛍光ペンで、グレーに色を付けたいなら網掛けでいいよね♪」
と、安易に考えてしまうかもしれませんが、やめた方がいいです!
実は、蛍光ペンは網かけと大きな違いがあります。
その2つの違いが最も実感できる瞬間は、《すべての書式をクリア》を押した時でしょう。
ご存知の方も多い機能ですが、こちらのボタンを押すだけで、選択中の文字データに適用された全ての書式(色とか見た目の変化を及ぼす装飾のこと)が全てクリアされます。
今回ももちろん、全ての文字を選択して、《すべての書式をクリア》ボタンを押しますと、普通の黒い文字だけの画面に……なりません。
上記の画像は既に《すべての書式をクリア》を実行した後なのですが、蛍光ペンで着色した黄色い色が残ってしまっています。
《すべての書式をクリア》した筈なのに、蛍光ペンが消えません!
実は《蛍光ペン》という機能は、普通の書式とは違う独自の設定がされているようなんです。
蛍光ペンの普通じゃないところ
上記で少し説明しましたが、蛍光ペンは普通の書式として扱えないものとなっております。
最初に強調しておきますが、ここから少しの間は個人的な見解が入ります。
(昔、何かで調べた際に見つけた内容も含まれているのですが、現在のネットで調べても出てこない内容で、100%正確かは怪しいので、あくまでも「個人的な見解」とさせてください)
結論からお話してしまうと、蛍光ペンは文書の作成時の装飾に使うべき機能として搭載されたわけでないから……だと思います。
私達が考えるような文書作成時の装飾は《文字の網かけ》で使うことを前提とされていると思うんです。
では、「蛍光ペンは何に使うか?」といった冒頭の問いに戻りましょう。
ズバリ、(アナログ)の蛍光ペンで引くべきところをデータ上でやってしまえる機能だと思います。
少し例を出してみますが、例えば下のような文書を配布したとします。
けど、こんな色付きの物を配布してしまうと、BやCグループの方は困ってしまいます。
よって、普通ならばデータ上で付けるべきではない色です。
こういった部分に使いやすいような機能が《蛍光ペン》には備わっております。
(個人的見解終わり)
簡単な使用例を紹介しましたが、では実際に蛍光ペンの普通ではない機能を紹介していきたいと思います。
蛍光ペンの消し方
色の付け方はわかるが、消し方がわからない。
そうなると、消す際は文字を全部消して、また入力から始めなくてはなりません。
非常に効率が悪いので、確実に覚えてしまいましょう。
消し方は単純です。
- 消したい文字を範囲選択します。
- 色を付けた時と同じボタン……の左脇にあるvの部分をクリックし、《色なし》を選びます。
どの機能でも同様の事が言えますが、大体の場合、適用した時と同じ場所から削除が出来ますので、削除がわからない場合は、適用した部分の辺りを探ると良いです。
蛍光ペンの表示をなくしてしまう(印刷もされない)
知っている人は少ない部分ですが、実は蛍光ペンはデータ上に適用されたまま、「見た目の表示はなくす」上に「印刷もされない」という事が可能です。
まずは、《ファイル》タブをクリックし、出て来た画面の1番下にある《その他》をクリックすると出てくる部分の《オプション》をクリックします。
たったこれだけです。
……と簡単に言ってしまいましたが、知らないと辿り着けない場所でもあります。
上記の設定をしますと、蛍光ペンが見えなくなります。
また、印刷もされなくなります。
注意点は、《オプション》で設定したものは今開いているファイルだけでなく、全てのファイルに影響してしまうという点です。
一時的に表示をなくすのは良いですが、(特に会社とか多数の者が使うパソコンでは)使い終わったら必ず元通りチェックを入れておいてください。
(蛍光ペンで色を入れている人はパソコンが壊れたと大騒ぎする事件が発生します/笑)
ちなみに、こちらの機能を使えば、多数に配布する資料の制作者は自分の必要な部分を蛍光ペンで目印をつけておいて、自分の分だけ印刷。
自分以外に配布する際は、表示および印刷ができなくすれば、わざわざ個人用のデータを作る必要性がなくなって便利ですよね。
蛍光ペンの部分を検索できる
3つめの蛍光ペンの特徴ですが、人によっては非常に便利な機能となります。
《ファイル》タブの《編集》グループの《検索》ボタンの左脇にあるvの部分をクリックすると、《高度な検索》というものが出ます。
けど、ここで注目すべきは高度な検索ウィンドウの左下の《オプション》です。
ここをクリックしますと、検索オプションが出る……まではご存知の方も多いでしょう。
このウィンドウの更に左下の《書式》の部分に注目して、クリックしてみてください。
すると、いくつかの項目が表示され、その1番下を見て見ると、《蛍光ペン》という文字があります。
こちらを選び、検索する文字列は何も入力せずに検索をすると、蛍光ペンで適用された文字が次々と検索できる仕組みとなっております。
教科書とかでもそうですが、蛍光ペンで印をつけた場所って、すぐに見つけたい場所じゃないですか?
正にアナログとデジタルの良いコラボレーションだと思いませんか?
(再び個人的見解)
こういった便利な機能が蛍光ペンだけに用意されていますので、それを考えると仕様用途はアナログで蛍光ペンを使うべき事をデータ上でやれるようにしている……ような気がしませんか?
まぁ、別に、普通にレイアウト上に網かけと同じように使っても良いのですが(どうせ印刷すれば見た目は同じだし)、きちんと使い分けした方が後に編集する際に便利ですし、(削除に困ったりとかせず)管理もしやすいのでは?と思います。
(個人的見解終了)
「線種とページ罫線と網かけの設定」について
今回のように「蛍光ペン」との比較で頻繁に挙がるのが、「文字の網かけ」と「線種とページ罫線と網かけ設定」です。
この3種を比較しているwebページが非常に多いのですが……正直に言ってしまうと、「文字の網掛け」と「線種とページ罫線と網かけ設定」は全く同じです。
(ので、実際は3種の比較ではなく、2種の比較が正しい表現だと思います)
簡単に文字の背景に色を付けられる《ホーム》タブに表示されているのが《文字の網掛け》ボタン。
そのボタンで色を付けた部分を変更したり、詳細設定が出来るのが《ホーム》タブの《段落》グループにある《罫線》ボタンの左脇にあるvの部分をクリックすると出てくる《線種とページ罫線と網かけ設定》です。
もっと正確に言うならば、《線種とページ罫線と網かけ設定》からでも文字の背景に色を付けられるのですが、かなり奥の階層まで辿り着かないといけないので、超不便です……。
網掛けした部分の色を変更する方法
- 網掛けをしている文字を選択範囲で選びます。
- 《ホーム》タブの《段落》グループにある《罫線》ボタンの左脇にあるvの部分をクリックすると出てくる《線種とページ罫線と網かけ設定》をクリックします。
- 出て来たウィンドウの《網かけ》タブをクリックします。
- 網かけの色が「自動」になっているので、お好きな色を選びます。
- 線種が「15%」のままだと荒いドットの表示となりますので、選んだ色がそのまま適用されたい場合は「塗りつぶし(100%)」を選びます。
(※例外として黒色を選んだ場合は、荒いドットではなくグレーの塗りつぶしになっています)
以上です。
上記は既に網かけをした上での変更方法ですが、もちろん最初からカラフルな色を使って網かけをする事も可能です。
それを可能にしているのが《線種とページ罫線と網かけ設定》ですので、その方法をご紹介します。
最初からカラフルな色で網掛けをする方法
- 網かけをしたい文字を選択範囲で選びます。
- 《ホーム》タブの《段落》グループにある《罫線》ボタンの左脇にあるvの部分をクリックすると出てくる《線種とページ罫線と網かけ設定》をクリックします。
- 出て来たウィンドウの《網かけ》タブをクリックします。
- 網かけの線種が「なし」になっているので、「塗りつぶし(100%)」を選びます。
- 網かけの色が「自動」になっているので、お好きな色を選びます。
以上です。
先ほどとの大きな違いは、4と5の順番が逆という点でしょうか。
既に網かけをしている部分の変更ならば順番は気にしなくても良いのですが、1から設定する場合は網かけの線種を先に設定しておかないと、色を選べません。
非常に単純な話なのですが、実際にこういったシーンに遭遇すると「バグ?」と疑いたくなってしまいますので、きっちりと把握しておいた方が良いです。
蛍光ペンと文字の網かけ、メリット・デメリット
最後に、ざっくりと各機能のメリット・デメリットを挙げたいと思います。
蛍光ペンのメリット
- カラフルな色を簡単に選べる
- 文字範囲を選択しないでボタンを押せば、連続して着色が可能
- 蛍光ペンで着色した部分を検索機能で抽出可能
蛍光ペンのデメリット
- 用意されている以外の色が使えない
- その用意されている色が強烈な色合いばかり
(2023年現在の最新ver.で15色ありますが、使い勝手の良い色は5色ぐらいしかない) - そもそも蛍光色はプリンターで表現できない色なので、印刷するとくすんだ色になる
(画面で完結するデータならばデメリットにはなりません) - 蛍光ペン機能を知らない人がデータを受け取った際は編集が困難
(蛍光ペンの削除ができない、網かけ設定で色を変更しようとしても出来ない) - オプションで蛍光ペンの表示がオフになっているのに気づかなかったら、機能が使えないと勘違いをしてしまう
文字の網かけのメリット
- グレーならば簡単に文字の背景に色を入れられる
- どんな色でも設定可能
- 蛍光ペンと違い、普通の書式なので「書式のクリア」ボタンで簡単に削除可能
文字の網かけのデメリット
- グレー以外の色の選択が少々面倒
- 蛍光ペンのように連続して網かけが出来ない
(ただし、書式のコピーで連続適用は可能) - 蛍光ペンしか知らない人だと、色の変更の仕方がわからない
(削除は書式のクリアで消せるのでデメリットと言うほどではないと思う)
こうして並べて見ると、蛍光ペンのデメリットが無視の出来ない範囲で多すぎますね。
個人的な目印としての役割で使うのであれば蛍光ペンは非常に優れているのは確かですが、機能の名前の通り、文字に網かけをするのであれば「文字の網かけ」機能の方が(凝った見た目のデータを作成したい中級者以上の方ならば)理想通りのデータの作成ができます。
けど、カラフルな色が簡単につけられる「蛍光ペン」の方が普及率は良い気がします。
……ぶっちゃけ、深く考えないで色を付けるだけならば、蛍光ペンが便利すぎますものね。
まぁ、結局のところ、自分の使い勝手の良い方法で作ればいいのでは?と思います。
けど、多数の方と共同でデータを編集したりするのであれば、一定の法則性をもたせて作業をした方が良いのは間違いないです。
全員が蛍光ペンを使うのであれば、蛍光ペンを使う。
全員が網かけを使用しているのであれば、網かけを使う。
作業する全員が困らないように使い分けられるよう、どちらの機能もしっかりと把握していくことをお勧めします。
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